のなめブログ

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恐ろしく長い一日(8)

僕は暖かい場所が欲しかった。今日は精神的にも冷たい数時間を過ごしていたし、何より朝5時台はまだまだ寒かった。夜はだんだんと明けようとしていた。空は厚い雲が覆っていて、雨がいつぽつりと降ってきてもおかしくない湿気だった。 僕は、管理者がいるんだかいないんだかわからないような汚い駐車場の脇に自転車を停めて、自動販売機でコーンポタージュを買った。僕はブロック石に腰をおろしてそれを飲んだ。本当に混沌とした駐車場であった。ゴミが捨ててあったし、真ん中に大きな木が立っていてどう見ても駐車の邪魔をしていた。何故か自転車を数台停めるスペースがあって、そこに自転車のバラバラの遺体が転がっていた。 コーンポタージュは体を温めるために買ったが、僕はその時お腹いっぱいの状態だったので半分しか入らなかった。そのまま半分を残してぼうっとしていたらコーンポタージュは冷えてしまって、僕にとっては何の意味も果たさない飲み物となってしまった。だがなおも僕は同じ姿勢で座っていた。麻美の顔を想像してはにやけた。初めての会話を思い返してはにやけた。数時間前までのデートを思い出してはまたにやけた。目を瞑って、僕は麻美のことばかり考えていた。麻美の体も欲しいけれど、僕はやはりあの笑顔が好きでたまらないのだ。 僕はその時半分起きていて、半分寝ていた。うとうとと一時間をブロック石の上で過ごしていたのだ。気付くと雨が降っていて、僕は横になっていた。ゆっくりと起き上がろうとした時、何かがポケットから落ちた。鍵だった。いつもと違って何故かポケットに家の鍵をしまっていたのだ。これで家に帰れると思った。鍵をなくした時はもう、家になんか帰らなくても生きてやるぞというよくわからない覚悟を決めたものだったが、見つかったのだから素直に帰った。 家に帰ると6時50分だった。家の者はまだ誰も起きていなかった。僕の部屋は暗く静かで冷え込んでいた。いつもの部屋だけど、特別にそんな印象を受けた。そして実際に僕はひどい寒気を感じていた。ここにきて頭も痛むような気がしてきた。何はともあれ寝ようと思い、布団に入った。 今日は授業はないけれど、学園祭のようなものの準備があって、クラス全員学校に集まってそれぞれ仕事をしなくてはならない日であった。僕は授業はあまり休まないけども、こういうのは休んじまえと思う人間であった。クラス一丸となって何かを作り上げたり、青春の思い出の1ページを作るよりも睡眠が欲しかった。こうして僕は、寝た。