のなめブログ

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恐ろしく長い一日(2)

 何と意外なことに、武蔵境には漫画喫茶あるいはインターネットカフェというものがなかった。三鷹の駅から少し離れた場所まで行かなければ、漫画喫茶はない。仕方なく僕は自転車で向かうことにした。 僕の自転車がとめてある駐輪場は、ここから歩いて3、4分ほどの場所にあった。僕は携帯電話でプロ野球の試合結果をチェックしながら、急ぎ足で駐輪場に向かった。広島カープは連敗を止めることが出来ず5位に転落した。 暗くてどれが自分の自転車か見分けがつけにくかったが、泥除けが変な形に曲がっているので注目すれば見つけやすい自転車ではあった。かごの中にごみが目一杯詰め込まれていてまるで放置自転車だった。いちいちかまっていられないのですぐに飛び乗って三鷹に向かった。

細い道を通った方が距離的には近かったが、暗くて怖いし道に迷いそうで、なるべく光の多い大きな通りを選んだ。静かで人通りはなく、たまに車が走るくらいだった。そのため空気が涼しくていい匂いがした。風が心地よい。 漫画喫茶に到着した時には意外と時間が経っていた。0時44分。家に帰ったら何時になるのだろう。僕は階段を駆け上がって、受付の前に立った。

「お客様身分証をお持ちでいらっしゃいますか?」

まずいと思った。世の中は未成年者に厳しくできているのだ。学生証を提示したら

「申し訳ございません、当店では…」

その先は何かごちゃごちゃ言っていたが、要するに高校生は夜10時以降は使えませんよという内容だった。ムカつく野郎だな、と思った。顔は老けているのに声が高くて、いかにも私は腰を低くしていますというアルバイト店員の喋り方だった。しかも早口で喋るので2、3度噛んでいた。 だがいくら心の中でアルバイト店員をバカ扱いしても僕の性欲は満たされないから、すぐに漫画喫茶を出た。次にカラオケボックスが思い浮かんだが、同じ要領でまただめだろうと思い諦めた。僕は自転車の前で少し考えた。個室であればもう、どこだっていいのだ。僕のことだから、5分か10分くらいで事は済む。どこかのトイレを借りてしようと思った。 結局僕は近くのミニストップに入った。もうオカズはいらないから、個室でさっさと出して帰りたかった。僕は店員に一応声をかけて、トイレに入ろうとした。

「申し訳ございません、当店では防犯上深夜は…」

つまりトイレは貸さないぞと、そういうことであった。今度の店員はどちらかというと軽いノリの、フレンドリー系の喋り方だった。だが言っている言葉は満喫のバカと同じだったので、やはり腹が立った。もう二度と「申し訳ございません」を聞きたくないなと思った。まったくそれにしても、三鷹の人間はよほど僕にマスターベーションさせたくないようである。僕は「あぁもう!」と聞こえないくらいの声で叫んで、コンビニを出た。 あぁもう。あたりにはコンビニと先程の漫画喫茶以外には何もなかった。あとの店はすべて閉まっていた。おとなしく家に帰るという選択肢は、僕の頭にはなかった。今すぐ、出したいのだ。若いってどうしてこうなんだろう。出した後は罪悪感で押しつぶされそうになるのに。 とりあえず自転車で、別のコンビニを探そうと思った。1時5分だった。