のなめブログ

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恐ろしく長い一日(1)

「門限って何なんだよ」

という一言が、この長い一日の始まりであった。時刻は0時1分。僕は武蔵境の駅を出たところであった。3週間前に付き合い始めた麻美と、つい先ほどまでデートをしていた。だが門限があると言って10時過ぎにお別れしてしまったのである。

「ねえ、もう疲れちゃったの?帰りたいの?」

と僕は言うのだが、彼女は

「ううん。本当にまだ一緒に遊んでいたいんだけど、帰らなくちゃいけないの。ごめんね。」

と言って帰った。僕は、帰りたくはないけど帰らなくちゃいけない、だから帰るという理論がさっぱりわからなかった。正確に言うと、ぼんやりとわかりそうな気もするのだが、やっぱり理解できなかった。門限ってそんなに守った方がいいものなんだろうか。門限を守ったらお小遣いが貰えるとか、何か特典があるのだろうか。それをずっと電車の中で窓際に立つ女性を見ながら考えていて、答えが出ずに武蔵境に着いてしまったのだ。だいたい大学2年生にもなって門限があるなんて、親バカもいいとこじゃないか。バーカ。 今日は準備万端で家を出たのだ。じいちゃんにもらった小遣い2万円を持ち、女性に人気の高いホテルもリサーチしてきた。恥ずかしかったけれどコンビニでコンドームを初めて買った。いつ誘おうとか、どうやってキスをしようかも、シミュレーションしてきた。童貞がバレないように、ビデオで研究して慣れているオーラを出そうとした。もちろん、これはただ僕がセックスをしたかったがためにしてきたことではない。二人の愛を深めるためだ。そのために僕は色々と考えてきた。 そして門限のために簡単に砕けた。仕方がないことだ。彼女ももしかしたら僕とセックスしたくてしたくてたまらなかったかもしれない。そう、今日は門限があることを初めて知ったのだからしょうがない。もっと早い時間に誘わないといけない、ということを学んだだけでも大きな前進と考えるべきである。少し大人な考えをした方がいい。 だがどうしてもマスターベーションしたかった。気分がそういうモードになっていたから、精子を出さないと気が済まない。家に帰れば兄貴が夜更かししてパソコンをいじっているので、オカズを探すことも行為をすることも不可能に近かった。満喫にでも行こうと思った。そこでさっさと済ませてさっさと帰る。それが当初の予定だった。