のなめブログ

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ぶるぶる(6)

新学期が始まり、クラスが変わった。仲のよかった明日香とはクラスが別になってしまった。

明日香はまだ高校生だというのに男を取っ替え引っ替えしていた。クラスの男子や他校の男子、大学生や社会人、友達のお兄さんや音楽の吉田先生の息子に手を出した時はさすがにやばいと思った。明日香はかわいくて色気もあるから、馬鹿な男はすぐに騙された。

私が今までに付き合った二人は両方とも明日香のおさがりで、一人は「明日香なんかつまらねーから捨ててやった」と言っていて、一人は「明日香はヤらしてくれないから諦めた」と言っていた。明日香自身はその二人のことはもう名前くらいしか覚えていないのだという。

確かに明日香は男遊びは派手だったが、ちゃんと学校には来るし酒も煙草もしない。成績はまあまあだけどとにかく頭が冴える女で、私の知っているどんな大人よりも彼女は大人だと思っている。ちゃんと悩み事を聞いてくれるし、何と言っても彼女と仲良くしていていいことは、男を紹介してくれることだ。だいたいは彼女のおさがりなのだけど。

私はある日の学校帰りに明日香にあって、話がしたかったので「一緒にコーヒーでも飲みに行かない?」と誘った。明日香は「いいねー!」と乗ってくれた。「今日は男と会わなくていいの?」と言うと「まあ誘われてはいるけど、のぞみと話したいし」と言っていた。私の名前は本当はのぞみではないけど、明日香は何故か「顔がのぞみっぽいから」という理由で私をのぞみと呼んでいる。

コーヒーを飲むとは言ってもこのあたりには中野のような喫茶店があるわけではなく、必然的にマックのコーヒーということになるのだった。しかも誘ったはいいが私はコーヒーが苦手で、ミルクと砂糖をたっぷり入れないと飲めない。私はいつもブラック派の明日香に馬鹿にされるのだった。

だらだらと話しているとまた明日香の男の愚痴を聞かされることになるので、私はいきなり聞きたかったことをぶつけてみた。

「ねえ明日香さ、ローターって使ったことある?」

「えっ」

私から思いがけない単語が飛び出すので明日香は驚いていた。明日香がいつも誰と寝ただの誰のは大きいだのといった話をする度に、経験のない私は嫌な顔をしていた。それだけにまさか私が「ローター」についてマックに誘ってまで聞いてくるとは思ってもみなかったのである。明日香がすぐに答えてくれないので私は恥ずかしい気持ちになった。