僕はアラブの石油王、とその愛人との間にできてしまった、世間に出てはいけない青年、プジャール。
そういう事情で僕は非常にお金持ちで、父から口止めの意味で毎月ものすごい量のお小遣いを振込まれている。
ここ最近まで僕は国内にいたのだけど、母が別の石油王と子供を作ったことが世間にばれて問題になったので、僕はうかうか国内で遊んでいられないぞ、と思い母が幼少期を過ごしたという日本にやってきたのだ。
でも「ヨンヒョン」という名前は日本では珍しい。
母はもしかすると韓国人なのかもしれない。
当分国には帰れそうもないから、僕は日本人になってしまおうと思った。
まず、日本の若者の行動を分析しなくちゃならない。
流行にも敏感でなくては。
そう思って僕は、若者がたくさん集まっていると噂の「ヨーチエン」に潜入してみようとした。
しかし門の前に立っている警備係らしき人間に「★〇ゝ@♀¢£÷…!!」と色々言われて、内容はよくわからなかったけど中に入れてくれなそうだった。
金塊を渡しても、石油の入ったツボを渡してもきかなかった。
日本人はガードがかたいのだ。
仕方なく大きな公園に行くと、数人の若者が同じ服を着て、同じカバンを持って、少しだらしないスタイルでタバコを吸っていた。
そこで「それは日本の若者の間ではポピュラーなスタイルですか」と尋ねたが、言葉が通じなかった。
しかしさすがインターナショナル派なプジャールちゃんは、ちゃんと英語もしゃべれるのである。
英語でもう一度尋ねると、彼らは「ノーイングリッシュ、アイムジャパニーズ、オーケー?」と言うので「英語喋れないの?」と尋ねると「オーマイガー、センキュー、ディスイズアペン」と答えた。
僕は、会話が成り立っていないことに気付いた。
もういいやと思って、僕はバイバイと言うと、彼らはタバコを一本くれた。
「オイシイヨ」という名前のタバコらしい。
僕はお礼に、ポケットに入っていたまだ削る前のダイヤモンドの塊をプレゼントした。
会話はできなかったけど、僕は嬉しかった。
少しだけ日本の若者の仲間入りができた気がする。
(つづく)