「私たちって、付き合ってるの?」
「えっ」
そんなわけはない。
だって俺には彼女がいるんだ。
…いや、正確に言うといたんだ。
「これが恋愛ってやつなのかなぁ」
君の中ではそうかも知れないよ。
でも俺は違うよ。
だいたい、二人で一回遊んだくらいでそう思うか?
「違うの?」
そうそう、君付き合ったことないんだよね。
もうすぐ二十歳なのに。
いい年頃なのに恋の味を知らないとは、もったいないねぇ。
「いや、違ってはいない。っていうか、近い。惜しい。」
何を言ってるんだ俺は。
違うし。
近くないし。
惜しくもないし。
「そっかぁ…」
何でそれで一応理解するんだよ。
「私のことは好きなの?嫌いなの?それだけ知りたい」
ホラホラ、これよ。
面倒くさいパターン。
嫌いだったら遊びに行かないって。
「嫌いじゃないよ。うん。」
「じゃあ、ライクなのかラブなのか!」
面倒くさすぎ。
解放してくれ。
「どっちかっつったらラブなのかな。」
あー。
思ってもないこと言っちゃったよ。
しかもどっちかっつったらって。
何その曖昧な感じ。
「ホント!?じゃあ私たち、どうやったら恋人になれるのかな?」
なれないよ。
こんなバカとは恋人になれないよ。
それに、俺には彼女が…。
「チューしたらなれる?」
恋を何だと思っているのだ。
チューする口実か。
チューして、恋愛っぽくなって、それに酔い痴れることが出来ればそれで満足か。
「体預けてもいいんだよぉ…」
「お、おい!それはさすがに…」
「ごめん、ちょっと積極的すぎた。でもホントにあなたなら体預けてもいいと思ってる」
もう、限界。
俺には耐えられない。
今まで言うのかわいそうと思って我慢してたけど、このままじゃ俺の方がかわいそうだ。
今言うしかない!
「いい加減にしろ!気持ち悪いんだよさっきから。男のくせによぉ!!」
そう言い捨てて俺がその場を去ると、さっきまで楽しそうに話していた男は泣き崩れてしまった。
(完)