夜10時~翌朝6時までの勤務で、間に1時間の休憩をとらなければならないのだが、仕事の時間配分上僕は朝5時半頃から休憩をとった。
つまり半分は休憩をとれずじまいである。
お客の混み具合、納品の時間、やるべき仕事量を考えると、僕は休憩を後回しにすべきと考えているのだ。
優先順位的には休憩なんて最下位なのだから。
だが他の従業員はこんなことをしない。
ちゃんと勤務の真ん中らへんで休憩を1時間とっているし、残業も仕事のやり残しもない。
省略できる仕事を省略しているからだ。
例えば什器の清掃など1日くらいやらなくてもそれほど変わらない。
だがそれをみんながさぼれば什器は当然日に日に汚れていくわけで、やはり誰かが清掃を怠らずにやらなくてはいけない。
それを僕はやっているので時間がかかるわけである。
お客が多く商品が売れて頻繁に売り場の補充をしなければいけない時間帯(太陽が出ている時間)の為に、在庫商品を従業員がすぐ出せるように整理することも夜勤の仕事だ、と僕は思って裏方の仕事をきっちりとやるのだが、そうすると休憩の時間が削られ無給の労働時間が増える。
そうした仕事は効果が表れにくく、誰から評価されることもない。
もちろん、時給の決定権を持つオーナーの目にも止まらず、僕の時給は再古株にもかかわらず1円も上がったことがない。
他の従業員にとっても、「ベテランのくせに仕事が遅い」従業員として目に映っているだろう――
どのバイト先にも一人はいる、最強の先輩。
やたら仕事が出来て、時給が一番高くて、指導力があって、みんながお手本として目指す先輩。
そういう存在に僕は密かに憧れていて、今のバイト先で再古株となり週5日働いていてそういう存在になる絶好のチャンスにもかかわらず、どうも「いっぱいシフトに入ってる人」みたいな存在にしかなっていないらしい。
僕を評価しないトップが悪いのか、僕が単に仕事の出来ない人なのか――
オーナーに発注を任せると常識では考えられない在庫過多になり、多くの商品が売り場に出る前に在庫のまま賞味期限を迎える。
だから僕はサービス残業をしてでもオーナーに発注をさせまいと発注業務を行い、適正量を発注する。
そのせいで、朝6時までの勤務でもいつもバイト先を去るのは7時前になる。
そこから自転車で小金井まで戻り、自宅の近くのマクドナルドで1~2時間程簿記の勉強をして、帰って寝るというのが僕の習慣だ。
帰宅するのは9時を過ぎたり過ぎなかったり――
毎日毎日同じ行程を繰り返して、唯一変わっているのは簿記のテキストのページとカープの試合のハイライト動画(YouTube)くらい。
自分は何をやっているのか。
自分を「裏方」とカッコつけて名付けてみたところで、所詮まわりから見たら「シフトにたくさん入ってる人」でしかなくて、僕が突然ここを辞めてしまっても「週5日の穴をいかにして埋めるか」という問題にしかならない、ような気がしている。
例えばカープの4番、栗原がチャンスにタイムリーヒットを打っても、「4番の仕事をしたな」としか思わない。
でもピッチャーの前田健太がタイムリーヒットを打ったら、「うわ、すげーよくやったよ前田!」と思う。
要するに4番に期待されている役割は非常に大きいのだ。
打って当たり前。
僕もそんな風な存在であればまわりに評価されなくても納得できるんだが、どうなんだろう。
今日は発注もせず、6時15分にはバイト先を後にしていた。
夜勤の従業員が一人急に病気でシフトに入れなくなったとかで、僕が彼に替わった。
僕はそういう要員なんだろうか。
オーナーからの評価はアテにならないから気にしないとして、他従業員からはどう思われているんだろう。
そんな事ばかり最近気にしている。
女子高生からタメ口を使われているのは親しさの現れなのか、馬鹿にされているのか。
後者のような気がする。
今電車の目の前で酔っ払っている。
酒無しでは眠れないのだ。
僕がモラトリアム期を無駄に過ごした、好きな場所で酒を飲んでいる。
酔う為に。
酔って早く寝る為に。
そして今日の居酒屋のバイトに備えるのだ。