盛田隆二はくせになる。
「夜の果てまで」という長編恋愛小説を読んで、そう思った。
簡単にまとめると、大学生と人妻が駆け落ちして遠いところで隠れて暮らす、というありきたりのようなクラシカルなようなベタなようなストーリーだが、描き方が違う。
例えばとても美しい言葉遣いで情景を描写して繊細さを押し出したり、時間軸をずらしにずらして伏線を駆使することで深みを出してみたり、といったことは盛田隆二の専門ではない。
あるがままを正確に読者に伝えているだけだ。
スピード感が、我々の生きている現実社会と全く同じで、まるでカメラ一台で撮った映画のように飾り気のない、それでいて地に足の着いたカメラワークだから、物語にすっと入っていける。
我々が物語に入っていくというよりは、物語が我々の現実社会に歩幅を合わせてくれているようだ。
つまり僕は盛田隆二に完全に吸い込まれてしまったのである。
しかし自分の感動を人に伝えたり人の魅力を伝えたりするのって難しいやなぁ。
レビューの文章術を勉強しようかしら。