一年に一度、ある日に向かって集中的に需要の高まるアニマルがいる。
それが、トナカイである。
クリスマスシーズンが近づくにつれ、街のいたるところに、サンタとともにトナカイのイラストやキャラクターが登場する。
もちろん、本物の生きたトナカイも、この時期だけは稼働率が高くなる。
彼らは一年のうちでこのときだけが晴れ舞台となるのだ。
しかし、悲しいかな、クリスマスが終わったとたんに、人々の目は変わってしまう。
昨日まではトナカイを温かい目で見ていたはずなのに、12月26日になったとたんに「終わっちゃったね」という目で見る。
3日も経てば「あー、まだいるんだぁ」の目である。
もう年越し&お正月モードに入ろうとしているときに、まだいるんだぁ、の目で人々はトナカイを見る。
しかしよく考えてほしい。
別に、トナカイは終わっていない。
正月にトナカイがいたっていいではないか。
真夏の太陽の下、トナカイがいたっておかしいことではないはずじゃないか。
この理不尽な扱いについて、当のトナカイはどう思っているのだろうか。
そうですね・・・。あたしの場合は、最初諦めから入ってたんです。
っていうのは、これがあたしのさだめなんだろうって割り切ってました。
やっぱり季節性のあるものってそうじゃないですか。
あたしだけじゃないんですよね、こういう運命にあるのって。
イベントのキャラクターなんて、イベントが終わっちゃったらもう用済みなんです。
最初はそうやって諦めてはいたんですよ、私も。
最初はっていうことは、今は考え方が違うのでしょうか?
ええ、やっぱり違うかなって最近思うようになったんです。
だってね、あたし生きてるのよ。
だってね、あたしたちと同じように他のクリスマス関連のものは、
クリスマスが終わったとたんに用済みになるわけでしょ?
でもね、そいつら生きてないのよ。
サンタなんか典型的ですよね。
あんなの所詮空想の人物であって、ドラゴンとかつちのことか、
そういう類なんですよ。
サンタとつちのこは別のような気がしますが、そうですね、確かに。
でもあたしたちは違うんです、生きてるんですよ。
架空の動物じゃないんです。
犬や猿やキジと一緒で、ってこれは桃太郎か、
とにかく実在する生物なんですよ。
そんなあたしたちが、他の架空の創造物と同じような仕打ちを
受けてもいいのでしょうか。
それで、怒りがふつふつとこみ上げてきたということですね。
それであたし、トナカイ界を代表して、トナカイの声を世間の皆様に届けたいと思いまして、
このたび本を出版させていただきました。
タイトルは「あたしトナカイですが、何か。」定価は
あの、宣伝の場ではないのでここはカットさせていただきます。
あら、そう?
とかいうまあようつまらんもんをこのクソ寒い朝方に書くなあわしも。
オマケ
父
ホラ大樹、見てごらん。
あそこに小さなトナカイがいるよ。
まだ子供だねー。
子
かわいいー♪トナカイかわいいーー♪
トナカイ
あぁん、いやん、そんなに見つめられたら、
あたし、恥ずかしくて、何だか・・・
変な気分になってきちゃった。
父
今あのトナカイすごく色っぽかったんだけど、
子供じゃないのかな?
ねえ、君もしかして「大人かい」?
なんでもないです、見なかったことにしてください。