原付がほしくてバイク屋に行ったら、感じのいいおっちゃんが相手をしてくれた。
こちらが原付についてほとんど知識がないと言うと、おっちゃんはうれしそうに原付の話をたくさんしてくれた。
夜の7時、もう閉店しようとしていたのかもわからないが、誰も客がいないなかでおっちゃんは幸せそうに僕に話してくれた。
バイクが好きでたまらないんだろう。
秋田でバイク屋をやっていた祖父を思い出した。
僕が生まれたときにはもうバイク屋はなく居酒屋にかわっていたが、とにかくバイクが好きで、ガソリンのにおいをかいだだけで興奮していたそうだ。
病気を患っているのに東京から原付で秋田まで行ったこともあった。
きっと祖父もまだ生きていてバイクを売っていたら、うれしそうに語るのだろう。
僕は祖父が好きだった。
モノを作るのが大好きで、プラレールやレゴで一緒に遊んだ。
道に落ちていたものをすぐ拾ってくる。
それを使ってまた何か作る。
そして祖父は新しい物好きで、頑固で、変人だった。
僕がその遺伝子を見事に受け継いだ。
家族からは理解されなかったようだけど、僕をすごくかわいがってくれて、僕も祖父が大好きだった。
気が合うのだ。
祖父に会いたい。
原付の話をききたい。
一緒に変なものを作りたい。
そんなことを思った。
祖父が生きていたら原付が安く手に入ったかもな。
という実利的な希望も有りで。