その昔、あるところに一組の男女がおったそうな。
この二人はデートといえばお台場、下北沢、原宿と定番のスポットばかりで、もっと刺激的なデートコースはないだろうかと悩み模索しておったそうな。
そこで男は以前から自分の趣味であった「釣り」に女を誘ってみるのであった。
女は「釣りってつまらなそう」とぼやいたが、男は強引に女を連れてある川の上流近くまでやってきた。
男は慣れた手つきで、釣りの準備を始めた。
女はそれを見て、次第に少し興味を持つようになってきた。
女は、「釣りは意外と私に退屈させないものかもしれない」と期待をした。
男がそれほどわくわくしていたからである。
二人は竿を下ろした。
女は、釣りの間は二人で楽しい話をするものだとばかり思って男に話し掛けたが、男の方は釣りに集中したいのか静かにしたいそぶりである。
仕方なく女は静かに竿を眺めていることにした。
お昼になって、二人は一旦釣りを中断して女が気合いを入れて作ってきたお弁当を食べることにした。
普通ならここでいい雰囲気になるところだが、釣りの沈黙に慣れた二人は弁当を食べる時でも黙ったままだった。
その後釣りを再開してから、夕方になって男がようやく一匹魚を釣るまで、二人はお互いに一言も喋らなかった。
帰りぎわ、男が「いやぁ最後に一匹釣れて良かったねぇ」と言うと、女はついに怒りだして「どこが良かったのよ!全然喋りもせずぼーっと座ってるだけじゃない。散々待ってやっと一匹だけ?釣りなんて暇で退屈!もうやだ!」と言って一人で帰ってしまった。
男は何を失敗したのかわからなかった。
しかし男は悔しかったので、この思いを後に残そうと考えた。
そこで、「散々(33)」待たせたこの日を「ひまなつり」の日として、3月3日は必ずこの出来事を思い出すようにしたのだ。
3月3日に「ひまなつり」をするのはそこに由来しているのである。