2008年10月6日、23時55分。
華の10代があと5分で終わろうとしている。
結局俺は予定を4年過ぎてしまったこの時でも童貞を卒業出来ないでいる。
家族はもうとっくに寝た。
部屋で1人、クロマニヨンズのセカンドアルバムを聴いている。
11曲目の途中で俺は成人になった。
童貞卒業どころか彼女の1人も出来なかったなぁとふがいない10代生活を振り返る。
その時、突然部屋に不審者が侵入。
手には「ドッキリ大成功!」と書かれたフリップが。
当然俺は戸惑う。
「何ですか一体??」
「ドッキリです!ご苦労様でしたー。」
「えっ…!?」
聞くところによると俺の生きてきた20年間は意図的に作り上げられたドッキリ番組だったらしい。
「つらい人生でしたよね!?」
「いやつらいはつらいですけど…これくらい普通なんじゃないんですか??」
「普通じゃないですよ!かなり過酷な試練を与えてきたんですから!」
「ていうか今まで俺が本気で悩まされてきたこととか全部テレビで放送されてるんですか??」
「はい!毎週大爆笑です。」
「最低…」
「まあ、しょうがないですね面白いんだから!」
「あの、人生って本当はもっと楽しいんですか??」
「楽しいですよ!ではこれから本当の楽しい人生を送っていただきましょう!」
それからの生活は凄かった。
まず顔の皮膚を一枚ぺろんとはがしたら下には凄くイケメンな顔が待っていた。
俺こんなにかっこよかったんだ。
そして1日寝ただけで背が15センチ伸びた。
一気に185センチの巨人となった。
声もいつの間にか高くなっていた。
シまで楽に出るようになっていた。
これで自分の歌が歌える。
そしていざ人前で歌ってみるとみんなが俺の曲の虜になっていった。
友達がいつもそばにいてくれるようになり、かわいい女の子たちも俺に寄ってくるようになった。
みんなが俺のいいところを認めてくれる。
さらに、本当の人生ってものは勉強なんかしなくてもいいらしい。
スポーツしなくても健康でいられるし体が強くなるしモテる。
ほいでもっていくら待っても年を取らない、永遠の18歳でいられる。
もう、今まで思っていた常識が全部ぶっ壊されて、ただただ人生が楽しくてしょうがない。
しかしそんな幸福は存在するわけがないし幸福かどうかも疑わしい。
結局人生てのはうまくいかないようにうまく出来てんだな、ちくしょー。