おじさんは今日も家庭のために働きます。
朝の通勤電車にもまれます。
電車は揺れます。
体の小さいおじさんは周りに押されて潰れます。
それでも頑張って我慢します。
次の瞬間、隣にいた女子高生が叫びます。
「痴漢です!」
おじさんは右手を掴まれます。
女子高生の隣にいたお友達らしき女の子が最低といいます。
おじさんは困ってしまいます。
おじさんは次の駅でおろされます。
おじさんは駅の事務室に連れていかれます。
しばらく取り調べされますが、おじさんは無実を主張します。
警察を呼ぶから待つようにと言われます。
女子高生二人組は嘲笑います。
おじさんはしばらく待っているうちに眠くなって寝てしまいました。
おじさんは夢を見ました。
おじさんは夢の中では高校生です。
目の前に可愛いお嬢さんがいます。
おじさんはそのお嬢さんに話し掛けようとしますが声が出ません。
仕方ないのでジェスチャーで面白いポーズをとってお嬢さんを笑わせます。
笑った顔がとても素敵な女性です。
しかしお嬢さんは最初は笑っていますが、だんだん目が潤んできてついには泣きだしてしまいます。
おじさんはまた声をかけようとしますがやはり声が出ません。
すると遠くから男の人がやってきてお嬢さんに話し掛けます。
お嬢さんはすぐに泣きやんで、二人は仲良く肩を並べてどこかへいなくなってしまいます。
気付いたらおじさんは独りぼっちです。
人もお店も街もありません。
真っ白です。
おじさんは声も出ずに泣きました。
そこでおじさんは目が覚めました。
気付くとそこは駅ではなく警察の取り調べ室です。
警察の人が何か色々説明している途中らしいのですが何を言っているのかわかりません。
最後に警察の人が「いいですね」というので「いいです」と言います。
この「いいです」のおかげでおじさんの罪はいつのまにか痴漢罪ではなく強姦罪になってしまいます。
おじさんは猛抗議します。
しかしどうにもなりません。
おじさんはその夜また夢を見ます。
おじさんはまた高校生です。
目の前にはあのお嬢さんがいます。
お嬢さんは小さな声で「ごめんね」と言って走ってどこかへ行こうとします。
おじさんは追い掛けます。
辺りは真っ白で何もありません。
おじさんは見えない崖から転落してしまいました。
意識がありません。
それからもう3ヵ月になります。
おじさんは病院のベッドで意識の無いまま寝ています。
実は、痴漢で捕まったほうが本当の夢で、お嬢さんの世界が現実の世界だったのです。
彼の意識はもう戻りません。
えっ??