のなめブログ

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変なバイオリン

一昨日のことである。

僕は自分の虫歯が進行していることを

目を瞑ってつい4年間くらい

歯医者に通うのをサボっていたのだが、

母親に口が臭いと言われてしまい

ついに堪忍して歯医者に行ったのである。

今考えれば口臭と虫歯はあまり

関係ないもののような気もする。

そこで僕はまず、歯磨き講習を受ける。

歯ブラシの正しい持ち方から、

自分の歯並びに適した歯の磨く順番まで。

ただこれをやってくれるのは、

メインの医者ではなく歯科助手なのである。

さて、ここまで読んだ段階で、

勘のいい方はもうすでに、

「どうせその歯科助手にムラムラ

きてしまったとか、そういう話だろう」

と先読みしてとちるかも知れない。

しかしそういう人には安心してほしい。

まさにその通りなのだ。

椅子を倒された状態で、

口の中を見てもらっている時に

「顔をもうちょっとこっち向けて下さい」

と言われてそちらを向いたところ

案外距離が近くてどきりとした、

という安っぽい話ではない。

問題はその後である。

一通り歯磨き講習が終わった後、

歯科助手が綺麗に細い電動ブラシみたいので

僕の歯を一本ずつごしごしと、

歯茎との間まで磨いてくれるのだが、

それが衝撃的だったのである。

どんなに献身的な、健気な、

僕のことをすごく愛してくれるような

恋人でも、そんな細かいところまでは

献身的にごしごししてくれまい。

「あなたの全てを愛してるわ」

とか言ってくれる女の子がいたとしても、

僕の歯までは愛していないし、

歯と歯茎の間に挟まった見えないようなカスを

除去してあげたいという発想には至らない。

僕自身、すごく大好きな女の子の

爪の間に詰まった垢をとってやりたいくらいは

一人の男として思うのが当たり前と思うが、

歯垢をとってあげたいなどとは正直思いもよらない。

こうして僕は彼女のひたむきな姿勢に、

思わずぽわわんとなってしまったのである。

もちろん半分は妄信である。

一人の歯科助手が患者の僕に、

何か特別な感情を抱いて歯をごしごししてくれる、

などと本気で期待しているわけではない。

しかしあのごしごしは本気だった。

こんなに小さな僕の体の一部を、

一つずつこんなにも丁寧に綺麗にしてくれるなんて、

きっと僕が彼女にとって特別な存在であるに違いない、

そう期待してしまっても何の不思議もない、

それくらいのひたむきさが彼女にはあった。

そしてそんな淡い期待を抱いた数分後、

メイン医者が僕の歯茎に麻酔を打ち放って、

奥歯をキュインキュイン削るのであった。

あれは明らかに僕への警告だった。

俺の女に手を出すと痛い目に逢うぞと。

だから僕は大人の対応で医者に譲ったのだ。

医者と歯科助手の間にどんな関係が

芽生えているのかは知らない。

でも僕は大人だから、譲ってやるよと。

そういう心の余裕がなければ

あんなに高い金は払えない。

という久々バカ過ぎる記事