のなめブログ

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途中の話

西荻窪のスタジオに向かう途中。

僕はイトーヨーカドーに自転車を停めた。

ただで停めさせてもらうのは悪いので、コーヒーか何か買おうと思い食料品のフロアを通過した。

すると目の前に現れたのは黄色いド派手なセットと、数人のピチピチキウイガールであった。

思えばこの夏短期バイトを探していると、やたらキウイのPRの仕事の募集が多かったのだ。

それに応募し、顔審査と体型審査を通過し、半日かそれくらいの研修を経た精鋭たちだけが、あの黄色いド派手なコスチュームを身にまとうことができるのだ。

その数名のキウイガールの中にいた1人が、見覚えのある顔であった。

チワワのように訴えるかのような瞳に、いかにもキャピってそうな若さ溢れる顔立ち。

前のバイト先にいた女の子だ!

とわりと確信に近い疑いをもってしてそのキウイガールの方へ歩み寄って行ったが、近づけば近づくほど彼女は違う顔になっていった。

そしてあまりにも僕が強い視線で彼女を見つめるので、彼女は僕の視線に気付き、研修で鍛えられた喋り方で「いらっしゃいませぇ~」と言いながら、僕に試食のキウイを差し出してきた。

キウイガールは100点の笑顔でつまようじの刺さった黄色のキウイを差し出してくる。

顔も声も全く知らない、ただのキウイガールだった。

僕は居たたまれない気持ちになって、0.5秒だけキウイガールと見つめ合って、嫌そうな顔をして黄金に輝く一切れのキウイの前を素通りした。

キウイガールは僕の背の後ろで「チッ、何だよあのミュージシャン気取りが」と心でぼやいたかも知れない。

僕は一瞬だけ、元のバイト先の女は元気だろうかと、本気ではない心配をした。

だが、まあ少なくとも僕よりは元気だろうと思い直した。

それなりに色々考えて上手く生きられる人間なのだろうと、勝手に思った。

だがこれは彼女の心配をしているようであって、実は自分の将来が見えないのを、または過去、現在、未来のつながりがバラバラであることを不安に思っているのであった。

キウイガールもきっと、必要性があってキウイを売り、そこから未来にまた何か繋がっていくものがあって、まあ上手く生きていくのだろうと勝手に想像した。

生産性のない活動ばかり好む僕は、キウイガールを睨んで無視することしかできないのだ。

色々考えるけれど、結局は考えてるだけでただのバカなのかもしれない。