新しく友人関係を築くということに関して、俺は面倒くさいというわけではないのだが頑張るのが嫌なんだ。
という微妙なニュアンスの違いをIさんに解らせようとした俺がバカだった。
ちっとも理解されなかった。
もっとも向こうは知らない子に平気で(?)話し掛けていってお友達の輪を広げる力がすごく、また友達は多いに越したことはないという考えは彼女だけでなく大学にいるみんなに共通しているような雰囲気なので、なんだか負けた気分だ。
実際に負けでも何でもいいんだけど。
大学に入って、俺はほとんどIさんの友達としか交流がない。
それさえもあんまりないんだけど。
そしてその人達には俺のシュールな異次元のギャグが通用しない。
だいたい俺の存在自体がギャグなのに。
本当俺「生きるギャグ」だと思うよ。
それが通用しないのはつらい。
生きる意味を否定されたようだ。
そこで今日世紀の大実験を敢行した。
知り合いが誰一人いない、導入演習。
ゼミだ。
そこで俺のギャグは通じるのか。
この大学にはシュールな面白さがわかる人間がいるのか。
生きるギャグは生きられるのか。
自己紹介の時だ。
俺は自己紹介を「笑いをとらなきゃいけないもの」としか考えられないので、これは絶好のチャンスだ。
①まず名前を言う。
そして独壇場のはじまり!?
②「声が低いです。」
自己紹介で声の低さをアピールするバカがこの世のどこにおるだろうかというある種の社会批判の意味も込めて送り込んだ一発目のギャグは、みんなあまりにも(そのギャグが)ハイレベルでついていけなかったのか、ちょっと考えてからようやく少し失笑がきこえる(要はスベったんだな)。
③「ベース弾きます。」
反応ゼロ。
何のベースかわからなかったのだろう。
基礎か?塁か?
④「ギター弾きます。」
おーと言ったのは先生。
ちょっとざわつく。
⑤「ドラムもします。」
ようやく笑い声が。
単にすごいなという意味の笑い声だったら残念である。
⑥「ハーモニカも吹きます。」
まだあるのかよ的な笑いか??
⑦「絵も描きます。」
同じくまだあるのかよ的な笑い??
⑧「あとは…踊ります。」
ロックンロールダンスのことだがそれを言ってもわからないしシラケるだろうと思い、踊りますにした。
しかしここには「単に『踊ります』だけ言っても意味わかんなくておかしな人になっちゃうじゃないか」という意図が含まれていて、多分計画通り「おかしな人だ」という認識を与えることができたと思うし、笑いも取れた。
結果、実験はうまくいったと言っていいのだろうか。
もしかしたらこの先ここの人たちには俺のギャグは通じるかも知れない。
いや通じたとしても、そこでとどまることなかれ!
大学入ってから一番頑張った気がする。
というか自分を犠牲にした。
はあ。
明日はどう生き延びようか。