俺は牛乳。
そう、あの牛の乳から出る白いエキス。
俺には悩みがある。
彼女が出来ないんだ。
いや、むしろ生物のように恋がしたい。
他の生物達はまさか俺がこんなふうに思ってるとは思わないだろう。
生物は俺をただの飲み物もしくはただの白い液体だと思っている。
違うんだぜ。
牛乳だってものを考えるし異性に興味がある。
生物に憧れさえ抱いてるんだ。
なんてったって牛乳と生きものの違いは、動けるかどうかなんだよ。
ノミだって動ける。
植物だって日光と水がありゃ立派に成長するだろ。
牛乳なんて自由に動くことも出来なければ成長も出来ない。
さらには命さえ与えられていないから、生と死の境目がどこだかわからない。
世の中はどうにもならないことばっかりで出来てるって奥田民生が散々教えてくれたし、俺もそんなに頭の堅い牛乳じゃないから(液体だしな)それは諦める。
生き物と恋に堕ちるのはムリだ。
無生物で我慢しよう。
でも無生物だとお互い動けないわコミュニケーションとれないわでだいぶ難しいところがあるんだよね。
今俺の隣に卵がいるんだけどね、まず性別がわかんないもん。
そして意志疎通の手段がない。
卵が果たしてものを考える物体かどうかもわからないんだぜ。
何も考えられないようなやつにアプローチしても恥ずかしいだけだし…
ってかアプローチ出来ないんだった。
別の牛乳に恋するか??
でも牛乳と牛乳をわざわざ混ぜ合わせるバカタレはいないしな。
あ、コーヒー!
いや、コーヒーは見た目がドス黒くてめっちゃ怖いよな。
やめよう。
絡まれたら一巻の終わりだ。
…はぁ。
結局このまま恋も出来ずに飲まれちゃうんだろうな、俺。
そうだ、飲まれる前にやっておきたいことをやっておこう。
………………。
特にないな。
牛乳として生きる意味ってないんだな。
何で俺牛乳なんだろう。
何で俺自由のない無生物に生まれたんだろう。
何で俺速水もこみちに生まれなかったんだろう(あいつの名前めっちゃ速そうだよな)。
いや、もこみちじゃなくてもいい。
人間がいい。
確かに人間は戦争とかして生き物殺しまくっててウザイけど、やっぱり自由度が一番高いよな。
牛乳作ってんのも人間だぜ。
牛の乳だけじゃ牛乳じゃないぜ。
人間って他の生物とか無生物にも嫌われてるけど、やっぱり羨ましい気持ちがあるよね。
だからこそ憎いんだと思う。
……………いいなぁ、もこみち。
長澤まさみと仲良くしたい放題じゃん。
チュッチュし放題じゃん。
ヤリたい放題じゃん。
俺はいつまで牛乳してなきゃいけないんだろ。
あ、冷蔵庫開いた。
飲まれるのか。
みなさんさようなら。
僕はこれから体内に行ってきます。
人間の皆さんは僕みたいに絶対に恋できないようなやつもいるんだってことを頭に留めておいて、思い切り恋してくだ
「ゴクッ。」
またね。